甘露の法門、甘露門などは〈さとり〉への入り口と意味.

世界観

頭部(口蓋の上、あるいは頭頂)に月(チャンドラ)があり、そこからアムリタ(甘露=不死の霊液)が絶えず滴り落ちている。臍のあたりには太陽(スーリヤ)=消化の火があり、落ちてきたアムリタを焼き尽くしてしまう。この漏出と焼失こそが老化と死の原因.

チャンドラ(月)

頭部(口蓋の上、あるいは頭頂)

スーリヤ(太陽)

消化の火. 落ちてきたアムリタを焼き尽くしてしまう。

マディヤマー

月と太陽を結ぶ脈管. 「中央の」madhyamā

シッディ

超能力. 不死ないし長寿、白髪と皺の消失、死の克服。

アムリタ(甘露)

  • ビンドゥ = 白・月・シヴァ・男性原理
  • ラジャス = 赤・太陽・シャクティ・女性原理

ビンドゥ(露)

生命の精髄.

アムリタはビンドゥと同一視されます。つまり身体は、貴重な液体が漏れ続けている容器だという発想

ラヤヨーガのビンドゥとは別なのでややこしい.

ラジャス(経血)

ラジャス(rajas)女性の性的分泌液。ビンドゥと対をなす赤い要素.

🌙ブラフマチャリヤ(Brahmacharya)

ハタヨガ最重要キーワード. 禁欲.

性行為によるエネルギーの消耗を避けること。これは、生命エネルギーを大切にするという観点から重要視.

アパーナ

射精で消費されるビンドゥ.

🌙オージャス

生命エネルギー. 精液保持によって精液が生命エネルギーに昇華されたもの.

不漏精、漏精、保精. 精液保持. 精液の昇華.

🌙ウールドヴァレーター

オージャスが頭頂に達すること. ウール・ドヴァ・レータ. 精が上方に流れる者

📗ガンディー、獄中にてウールドヴァレーター覚醒

技法

🌙シールシャ・アーサナ

逆転の行法.

ヴィパリータ・カラニー

文字通り身体を逆さにする。月が下・太陽が上になれば甘露は火に落ちない。このモデルの原型的技法で、現代の倒立系ポーズの祖先.

🔒ムドラー

「封印」に近い意味で、身体の開口部や気の流れを閉じる技法

  • ハタヨガのムドラーは手印ではない.
  • バンダ ⊂ ムドラー, バンダはムドラーの部分集合

👅ケーチャリー・ムドラー

舌を反転させて鼻咽腔に挿し込み、滴下口を塞ぐ/直接甘露を飲む

🌙アシュウィニムドラー

🐚会陰の刺激. 🐍ムーラ・バンダとよく混同される. 肛門か会陰かの違い.

🌙ヴァジローリー・ムドラー

男性. 生殖器の筋肉をコントロールし、オージャスを保存・昇華させる

尿道からの吸引によって、射精しても精液を回収する

🌙サハジョーリー・ムドラー

女性. 骨盤底筋群をコントロールし、女性の生殖器周辺の筋肉を意識的に収縮・弛緩.

🌙アマローリー・ムドラー

自己の尿を飲用する実践を含む浄化技法

4つのムドラー

  • 手印(印相)— アンジャリ・ムドラー=合掌、ディヤーナ・ムドラー=禅定印、アバヤ・ムドラー=施無畏印、など
  • ハタヨガの封印技法 — ケーチャリー、ヴァジローリー、マハームドラー
  • 仏教タントラの明妃 — カルマムドラー(羯磨印/業印)、ジュニャーナムドラー(智印)。人を指す
  • カウラの五摩事(パンチャマカーラ)のムドラー — なんと炒った穀物。酒・肉・魚・ムドラー・性交の五つのうちの一つ

経典

📚不死の成就(アムリタシッディ)

最古層は『アムリタシッディ』(11世紀頃)。

  • 金剛乗仏教の環境で成立、🛕タントラ仏教の用語が多用されている.
  • バンダ系の技法を教える現存最古のテキスト.
  • シッディは神通力、超能力.
  • ビンドゥとラジャスを体内で合一させよ, 両者の結合は身体の内部で起きるもので、パートナーを必要としません。

マハームドラー

  • 左の踵を会陰に強く押し当てる
  • 右脚をまっすぐ伸ばす
  • 両手で右足のつま先をつかむ
  • ジャーランダラ・バンダ(顎のロック)をかける
  • 息を吸って止める(クンバカ)
  • 呼気はゆっくり吐く。激しく吐いてはならない、と明記されている
  • 左右均等に行う

マハーバンダ

  • 左踵を会陰に当て、右足を左の腿の上に置く(座位に畳む)
  • 息を吸い、ジャーランダラ・バンダ、そして会陰を締める(ムーラ・バンダ)
  • 止息して保持

マハーヴェーダ

大いなる貫通

  • マハーバンダの姿勢のまま、両手の掌を床につく
  • 臀部を持ち上げ、床に静かに打ちつける。これを繰り返す
  • 止息と喉のロックは保持したまま

マハーバンダの姿勢で臀部を床に打ちつけ、気を強引にスシュムナーへ押し込む。封じるどころか打撃・突破

現代のクラスでは消失した(危険?), ビンドゥ・モデルを捨てた瞬間にこの技法だけ理由が説明できなくなるから

Insights

道教ルート

インドからの伝播ではなく独立に成立した並行現象と見るのが通説

  • 📝房中術
  • 還精補脳 — 房中術の技法で、精を漏らさず脳に還す。ヴァジュローリー・ムドラーとほぼ同じ発想
  • 内丹術 煉丹 房中術 不漏
  • 精・気・神

チベット密教ルート

  • 気 脈 明点 — ビンドゥの定訳が明点(みょうてん)。チベット語 thig le の訳語で、風・脈・明点 あるいは 気・脈・明点 という三点セットが標準用語として定着しています。空点 という訳語もある
  • 明点 融解 大楽
  • これは偶然ではなく、『アムリタシッディ』自体が金剛乗仏教の環境で成立したという前回の話と直結します。同じ身体観の兄弟です