ブッダの説いた言葉. パーリ仏典のひとつ. 一夜賢者経.

タイトル

いろいろある.

  • バッデーカラッタ・スッタ:
    • Bhaddekarattaはbhadda(=bhadra)+eka+ratta
    • 「bhadda(吉祥な・幸運な・良い・聡い)+eka(一つ・或る)+ratta(夜)」
    • rattaは夜ではなく一つのことに夢中になるという意味ではないか?という説もある.
  • 一夜賢者の偈: この訳が一般的.
  • Knowing better way to live alone, ひとりで生きるよりよき道.
  • Every day is a Good Day, これは日日是好日の映画の英訳.
  • day by day, it’s a good day.
  • 跋地羅帝経(ばっじらていきょう), これは音読み.
  • 📜日日是好日経ということもある. これはスマナサーラ長老の訳とか. 禅語のものとお経は同じではない.
  • 中村元先生は, 吉祥なる一夜と訳す.

日本語

片山一良訳『中部(マッジマニカーヤ)』第一期6、大蔵出版pp.136-137)

過去を追いゆくことなかれ未来を願いゆくことなかれ過去はすでに過ぎ去りしもの未来は未だ来ぬものゆえに

現に存在している法をその場その場で観察し揺らぐことなく動じることなく知者はそれを修するがよい

今日こそ努め励むべきなり誰が明日の死を知ろうかの死王の大軍と約束することなきゆえにこのように住み、熱心に昼夜怠ることのないかれこそ〈賢善一喜〉なり、と寂静者なる牟尼は説く。

スマナサーラ長老訳

過去を追うな 未来を願うな過去はすでに過ぎ去ったもの 未来は未だ来ないもの現存している現象を その場その場で観察し揺らぐことなく動じることなく 智慧者はそれを修めるがよい今日こそ努め励むべき 誰が明日の死を知ろうされば死の大軍に 我ら煩う(わずらう)ことはなし

過去にすがることなく、未来を俟つことなかれ。過去、それは捨てられしもの。未来、それはいまだ到らざるもの。現在の事物〈dhamma〉、それをその場、その場にて明らかに観る。支配されることなく、動じることなく、それを知って心に確固たらしめる。今日こそ努力の為されるべき時である。誰が明日の死を知れようか。実にいかなる交渉も、死の大軍と交わすことは出来ない。このように、昼夜〈ahoratta〉おこたることなく熱意もってあること、それはまさしく「 一夜賢者」である、と寂静なる牟尼〈聖者.賢者〉は説く。

「日々是好日」偈 - 日本テーラワーダ仏教協会, スマナサーラ長老訳.

『この人を見よブッダ・ゴータマの生涯』名著選(佼成出版社)

一夜賢者の偈

過ぎ去れるを追いかけることなかれ(過去を追いかけず)未だ来たらざるを念(おも)うことなかれ(未来に心を奪われるな)過去、そはすでに捨てられたり(過去はすでになく)未来、そはいまだ到らざるなり(未来はまだ来ていない)されば、ただ現在するところのものを(まさに今ここにおいて)そのところにおいてよく観察すべし(いのちを深くありのままに見つめれば)揺らぐことなく、動ずることなく(その修行者の心は、不動そして自在にとどまる)それを見きわめ、それを実践すべし(今日を励みつつ)ただ今日まさに作すべきことを熱心になせ(生きること)たれか明日死のあることを知らんや(明日を待つのでは遅すぎる)まことにかの死魔の大軍と(死は突然にやって来る)遭わずということ、あることなし(それを避ける手立てはない)かくのごとくよく見きわめたるものは(賢者は言う)心をこめ、昼夜おこたることなく実践せん(昼も夜もマインドフルネスにとどまる者こそ)かくのごときを一夜賢者という(「ひとりで生きるより良き道を知る者」であると)また、心しずまるものとはいうなり

<増谷訳は『この人を見よブッダ・ゴータマの生涯』名著選(佼成出版社)より>

パーリー語

ref. https://viveka.site/BuddhaSasana/adhiprajna/sutra/bhaddekaratta_sutta/B1.html

“Atītaṃ nānvāgameyya, nappaṭikaṅkhe anāgataṃ; Yadatītaṃ pahīnaṃ taṃ, appattañca anāgataṃ. “Paccuppannañca yo dhammaṃ, tattha tattha vipassati; Asaṃhīraṃ asaṃkuppaṃ, taṃ vidvā manubrūhaye. “Ajjeva kiccamātappaṃ, ko jaññā maraṇaṃ suve; Na hi no saṅgaraṃ tena, mahāsenena maccunā. “Evaṃ vihāriṃ ātāpiṃ, ahorattamatanditaṃ; Taṃ ve bhaddekarattoti, santo ācikkhate muni”.

英語

ChatGPT.

“Do not pursue the past, do not long for the future. What is past is left behind; the future is as yet unreached.

Whatever quality is present, you clearly see right there, right there. Not taken in, unshaken — that’s how you develop the heart.

Ardently do what should be done today, who knows if tomorrow death comes. There is no bargaining with the great death’s army.

Thus, the enlightened sage said, ‘The one who dwells ardently, relentlessly both day and night, he is the one who has a fortunate day.‘”

跋地羅帝経

ばっじらていきょう,

愼莫念過去 亦勿願未來過去事已滅 未來復未至現在所有法 彼亦當爲思念無有堅強 慧者覺如是若作聖人行 孰知愁於死我要不會彼 大苦災患終如是行精勤 晝夜無懈怠是故常當説 跋地羅帝偈

ref Bhaddekaratta sutta(バッデーカラッタ・スッタ) 解題 ―「今を生きる」とは何か ‖ VIVEKA. For All Buddhist Studies

中阿含経,『温泉林天経』(Mahākaccānabhaddekaratta suttaに対応)・『釈中禅室尊経』(Lomasakaṅgiyabhaddekaratta suttaに対応)・『阿難説経』(Ānandabhaddekaratta suttaに対応)

Opinions

🔦騒音に満ちた世界の中でひとりで生きる静寂の世界を求めることが一夜賢者経のテーマ - 島田啓介

ref. 島田啓介「ティク・ナット・ハンとパーリ経典─「バッデーカラッタ・スッタ(一夜賢者経)」と現代のサンガ」[1/4] | オンラインサンガ

この騒音に満ちた世界の中で一点の静寂を求めること、それが「バッデーカラッタ・スッタ(一夜賢者経)」のテーマ「ひとりで生きること」の入り口だ。今ここに生きるには、ひとりでなければならないとブッダは言う。逆に言えば、騒音の中で私たちは決してひとりにはなれない。物理的な騒音というよりも問題は、清閑な環境に身を置いてもなお心の中の騒音が止まないということだ。どこにも逃げ場のない騒音地獄—それを「心のおしゃべり(絶え間ない思考)」と呼んだりする。瞑想の主眼は、まずその心のおしゃべりを静めることにある。

理知的な努力では思考は止まらない。それが「止めようと思って余計に雑音にとらわれる」理由である。「思うのではなく、気づく<こと」によってのみ、私たちは「止まりながら流れる」という存在の世界に入っていく。

<2024-07-19 Fri 19:29> 善い視点だ. ますますこの偈が好きになった. 騒音というのがとくにわたしの心に刺さる. 音がつらい. そして外界の音をどんなに防いだととしても, 今度は心の声を鎮めることができない. 毎晩毎晩, 一夜賢者経と慈経と般若心経を唱えてから寝ることを習慣にしたい. タイトルがひとそれぞれならば「吉祥一夜経」がいいなあ.

📑騒音への不快感

Insights

🔗References