ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ.

📚若きウェルテルの悩み - ゲーテ

💀自殺

📚ファウスト - ゲーテ

🔖ファウスト的衝動

さまざまな人生を遍歴し, 体験しながら, 自己の可能性をきわめつくそうとする人間の衝動.

📜時よ止まれ、お前はいかにも美しい - ファウスト

Zum Augenblicke dürft ich sagen: Verweile doch, du bist so schön!

🎓星の時間

📜根強い興味で引き附けなくては世間をとりこにすることは出来ない - ファウスト

根強い興味で引き附けなくては、世間を擒(とりこ)にすることは出来ない。膠(にわか)で接ぎ合せて、人の馳走の余物で骨董羹を拵えて、君の火消壺の中からケチな火を吹き起しても、それでは子供や猿どもでなくては感心はしない。どうせ君の肺腑から出た事でなくては、人の肺腑に徹するものではない。

Literature Notes

高橋義孝訳

ファウスト: 冒頭

いやはや, これまで哲学も, 法律学も, 医学も, むだとは知りつつ神学まで, 営々辛苦, 究めつくした. その結果がどうだといえば, 昔にくらべて少しも利口になってはおらぬ.

なるほど己は, そこらの医者や学者, 三百代言, 坊主などという, いい気な手合いよりは賢いし, 要らざる迷い, 疑いも知らず, 地獄や悪魔も怖いとは思わぬが, その代わりに, 生きる楽しみというものが全くなくなってしまった. なんと, 己はまだこの牢獄の中に屈まっているのか. 呪わしい陰気な, この壁穴の中に. これがお前の世界だが, これでも世界といえようか.

お前はこんなところにいて, なぜ胸が息苦しいと訊ねたりするのだ. なぜ不可解な苦痛が, お前の生命の動きを阻むのかと訊ねるのだ. 神が人間を創って, 人間の居場所と定めたもうたあの活き活きとした自然のかわりに, すすやカビだらけのこの部屋でお前はただ人や動物の骸骨にかしずかれているのだ. 逃げ出せ, さあ, 広やかな精霊の世界へ. お前はそのような世界へ行かれるはずだ. 自然の教えを受けたならば, 魂の力が目覚めてきて, 精霊どもの交わす言葉もわかろうというものだ. こんなところに座り込んでいたのでは, この書の神聖な記号が解けるはずのものではない.

ファウスト: メフィストフェレスの誘惑

メフィゥトーフェレス

いかがです, 弁舌巧みに快楽と行為を勧めるじゃありませんか. 心身ともに腐らせる孤独の境涯を去って, 広い世界へおでなさいと. どうです, わたしを家来にしてごらんなさい. 仰せのままになんでも致しましょう.

ファウスト

その代わり己はなにをすればいいのだ.

メフィストーフェレス

この世ではあなたにお仕え申しますが, あの世でお会いしたら, 今度はあなたが私の家来になる, というのではいかがです.

ファウスト

あの世のことは己にはどうでもいい. 己の喜びが湧き出るのは, この世のこの大地からだ. 己の苦しみを照らすのは, この世のこの太陽なのだ. 己が死んでしまったそのあとのことは, どうであろうと一向に構わぬ.

メフィストテーレス

そういうお考えなら, どうです, 手を打ちませんか. あなたがこの世にある限りは, わたしの術でたんとおもしろい目を見せて差し上げます.

ファウスト

君になにが見せられることやら.

すでに久しく己は一切の知識に吐き気を催しているのだ. 官能の深みで, この燃える情熱の炎を静まらせてくれ. 見通すことのできない魔法の垂幕の向こうに, 奇跡という奇跡をすぐに用意しておいてくれ. 「時」のざわめきの中へ, 事件の動きの中へ飛び込んでゆこうではないか. そして苦痛と快楽, 成功と不満が代わりがわりやってくるがいい, 己は一向に驚きはしない. 休みなく活動するのが男というものだ.

己がある刹那に向かって, 「とまれ, お前は本当に美しい」といったら, 己はお前に存分に料理されていい. 己は喜んで滅んで行く. そうしたら葬式の鐘がなるがいい. そのときは君の奉公も終わるのだ. 時計が停まり, 針も落ちるがいい. 己のすべては終わるのだ.

快楽などが問題ではない. めくるめくような想いがしてみたいのだ. 死なんばかりの快楽, 恋から出た憎しみ, 胸のすくような立腹など. 知識欲とは縁を切った己の胸は, 今後どんな苦痛をも避けぬつもりだ. 己は自分の心で, 全人類に課せられたものをじっくりと味わってみたい. 自分の精神で, 最高最深のものをつかんでみたい. そして己の心を人類の心にまで拡大し, 最後には人類同様, 己も滅んで行こうと思うのだ.

ファウスト: マルガレーテ

マルガレーテ

「あなた, 神を信じていらっしゃらないの」

ファウスト

「神の名を唱えて, 自分は神を信ずると, 告白できるものがいるだろうか. 心に神を感じていながら, 自分は神を信じないなどと, はたして言いきれるものであろうか. すべてを包む者, すべてを保つ者, その神は君をも私をも, 自分自身をも包み支えているのではあるまいか. 大空は大きな円天上を作っているし, 大地は足の下にしっかりと横たわっていて, 優しいまなざしで星星が, 永遠にさしのぼってくる. 君と眼と眼を見合わせていると, すべてが君の頭, 君の心におしせまってきて, 君の傍らでは, すべてが見ゆるが如く見えざるが如くに, 永遠の神秘のうちに動き働いているではないか. その気分で君の胸をいくらでも膨らませるがいいのだ. そうして君がその気持ちに浸りきって, もう何もいうことがなかったならば, その気持ちをなんとでも呼べばいいのだ, 幸福とも, まごころとも, 愛とも, 神ともね. それをなんと呼んでいいか, 私にはわからない. 気持ちが一番大切なんだ. 名など, 天の炎を霧のように包み隠す空虚な響き, 煙のようなものに過ぎない. この世に生を受けたものはみな, どこにいてもそういうことを言うはずだ, 各人各様の言葉遣いで. だから私だって同じことを私の流儀でいっているに過ぎないのだ.

ファウスト: フィナーレの描写

ファウスト

己は幾百万の民に土地を拓いてやる. 安全とはいえないが, 働いて自由な生活の送れる土地なのだ. 野は緑して, よく肥えて, 人も家畜も, すぐに新開地に心地よく, 大胆で勤勉な民が盛り上げた頼もしい丘の周りに平等に移り住むだろう. 潮が力ずくで土地を噛み削ろうとしても, 万人が力を合わせて急いで穴をふさぐだろう. そうだ, 己はこういう精神にこの身を捧げているのだ. それは叡智の, 最高の結論だが,

「日々に自由と生活とを闘い取らねばならぬ者こそ, 自由と生活とをうくるに値する」.

そしてこの土地ではそんな風に, 危険に取り囲まれて, 子供も大人も老人も, まめやかな歳月を送る迎えるのだ. 己はそういう人の群れを見たい, 己は自由な土地の上に, 自由な民とともに生きたい. そういう瞬間に向かって, 己は呼びかけたい,

「とまれ, お前はいかにも美しい」

と. 己の地上の生活の痕跡は, 幾世を経ても滅びるということがないだろう, そういう無上の幸福を想像して, 今, 己はこの最高の刹那を味わうのだ.

すべて移ろい行くものは, 永遠なるものの比喩にすぎず. かつて満たされざりしもの, 今ここに満たさる. 名状すべからざるもの, ここに遂げられたり. 永遠にして女性的なるもの, われらを引きて昇らしむ.

🎹マーラー: 交響曲第8番

🔗References